2006年10月24日

カインは弟アベルを殺した…雪組堕天使の涙

 

カインは弟アベルを殺した。
カインは神が自分よりアベルを愛したと感じたから。
アベルを殺したカインは、額に印を付けられて、エデンの東に追放される。
――創世記にも既に嫉妬の物語が描かれている。
でも、この追放は、愛ゆえなんですよ。
アベルを殺したカインを、他のものが殺さないように印をつけて追放という形で匿ったわけです。

ルシファーの神との関係性は、どうだったんだろうか。
神は何を思ったのだろうか。
神がわからない…わからないのはいいのですが(何しろ神様だし)、神を絶対視して台詞の中にしか出さなかったことが、逆にニセモノ感を強めてしまった気がします。

そう、この“堕天使の涙”の主題をひとつ選ぶとしたら“嫉妬”だと思うのです。

大量虐殺にも、公開処刑にも震えなかったルシファーの凍てついた心が、人間たちが交わす嫉妬には震える――怒りであったり疑問であったり、に。
それは多分、ルシファー自身が人間たちへの嫉妬によって天国を追われたから。
その弱さ、人間ぽさこそが、ドラマになるファクターなのでは(神とルシファーの関係性をきちんと見せていただかないことにはどうしようもないけど)。

人間たちの感情のやりとりも全て嫉妬が絡んで来る。
イヴェットに対する女子の嫉妬、弟子に対する師匠の嫉妬、娘に対する母親の嫉妬。
そして、嫉妬を飲み込んで生きるセバスチャン、ドンブイユ公爵(仮)。

それなのに、ちりばめられた物語が集結してクライマックスへの原動力になっていくはずなのに――そうは問屋が卸さなかったらしい。

ここで出てくるのが、景子先生の二元論ですよ…
ラスト近くで、ルシファーが[いつか悪がなくなり、地獄が不要になったら天国に帰れる]というようなことを呟く。
嫉妬によって追放されたルシファーですから、それがなくなれば天国に戻れるということだとしたら、嫉妬=悪ということでしょうか。
気持ちいいほどの二元論に腰が砕けます。
白か黒かで割り切れないグレーゾーンにある感情――それが、嫉妬なのに。

それを白と黒にきっぱりくっきりわけてしまった上で、結論は曖昧にしてしまったのが一番の敗因…。


そして物語は、驚愕のラストへ――!(B級映画のアオリみたい)

ともかく、景子先生がただただ書きたかったのはラストの台詞だったんだと思う……。
クリスマスの日、ジャンポールは晴れ晴れとした顔をして、親しげに話しかける。
「忘れないよ、お前のダンス!」
「ノエルの度に思い出すよ!」
…………どうしてですか、ジャンポール?
なにかあったんでしたっけ?
もしかして、リリスとルシファーの光のパ・ド・ドゥを、実はどっかで見ていたのか?
だって、ジャンポールが言う“お前のダンス”って、間違いなく光のパ・ド・ドゥのことを指していると思うのです。
それとも、まさか“地獄の舞踏会”のことを言っているの?
ジャンポールとルシファーの関係性が描かれないままあんな言葉を言われてもね、全く納得いかないのですよ。

でも、それがコムちゃまと水先輩だから。
去る者と、送る者だから。
すごくすごく切なくて、唐突な水先輩の台詞に思わず頷いてしまったよ…


我ながら景子先生には超辛口。
………だってあんなにきれいな舞台なのに、話がへっぽこなんてもったいなさすぎるんだもん…!

今回の“堕天使の涙”は、まさに今の雪組とコムちゃんまーちゃん、みずさんに宛てて書かれた作品。
そうやって一時代を築いたひとびとを送り出す儀式は、とても美しかったと思った。

リリスのことをすっかり書いておりませんね…出番があまりないのですよ…。
でも、まいかぜりらちゃんは今まで見た中で一番きれいだった。

 
posted by 海野モノトモ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 雪組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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