青山劇場にてメタルマクベスを観劇。
メタル、メタルは懐メロですよ!
なんか懐かしくて、おうちに帰ってからむかし聞いていたメタルを引っ張り出してきてしまいました…
とても、不思議な作品でした。
まず第一に、メタルを青山劇場で、おとなしく座って聞いているという違和感。
お尻がムズムズしました。
メタルって、アレじゃないの?ヘドバンしたりして次の日ムチウチになるのがクオリティじゃないの?
作り手のメタル好きの心意気は痛いほどわかったけど、彼らは1000人の客がおとなしくメタルを聞いている空間を作りたかったのでしょうか?
カーテンコールでメタルのぎゅいんぎゅいんのギターにあわせて客が手拍子をしているのは、メタルの美学としてはいいのでしょうか。
イマイチ意図が見えない。
構成としては、現代的な話し言葉とマクベスの古典的なセリフが面白いほど融合していて、引き込まれた…けど4時間は長いでしょう…。
なぜ長いかと言えば、ふたつの世界を交互に描いているから。これは効果的だったのでいいのですが、問題は本編とは関係ない人物たちがはびこるギャグシーンが多すぎるということでしょうか…。
新感線は役者芝居であるように見受けられたので、劇団ファンだとしたら、それこそがリピートする意味なのは痛いほど分かる。私がいくら大王ファンだとしても、花っ子たちに活躍してほしいのと一緒だと思います。
でも、ギャグシーンの入れ方がいただけないのです…吉本風の“3回繰り返すギャグ”がおおい…。
ギャグだけで見せるならいいですが、複雑なストーリーの中に挿入されると足踏み感が否めない。
早く先を追いたい!と思ってイライラしてしまうのです。
1980年代のメタル全盛期の時代と近未来のふたつの世界が平行して描かれていき、そのふたつの世界が、『シェイクスピアのマクベス』によってひとりの男の狂気として結びつき、溶け合っていく。
怒涛のカタルシス!
……だからこそ、ギャグ抜きでそれだけに集中して観たかった。
私は本来ギャグが嫌いな人ではないのですが、今回の芝居のギャグの質が私は生理的に受け付けなかったからかもしれません…劇中歌のメタルのどうしようもないダジャレは素直に笑えたんですけど…。
きたないはきれい…ただし俺以外!ってくだらねー!いとしい!
私はくだらなさを愛するので、CD買っちゃったもの。
でも、どうぶつの死骸、吐瀉物をギャグにするのがダメなんです…しかも3回、もしくは5回繰り返すんですよ、ご丁寧に。もらい○ロしそうになりました。
私、吐瀉物ギャグはイセリナでギリギリなんですもの…@神聖モテモテ王国…。
あとで同行者に「途中で席立っちゃうかと思った」と言われました…3センチお尻浮いてました…
それはともかく、特筆すべきはマクベス夫妻。
松夫人と内野マクベスがどんなにわちゃわちゃしていたギャグ場面でもすぐに本筋に引き寄せる力があった。
本当にすごかった。
とくにまつたか!
私は今までマクベスを何度観てもマクベス夫人の狂気の意味が分からなかったんですよ。
夫に殺人を促し、欲しいものを手に入れたのに、罪の意識に苛まれ、手を洗い始める…(どこかのポルキアさんみたいですが)。
前半と後半のキャラが違いすぎやしませんか。
なによりも、彼女の狂う大きなキッカケが分からなかった。
にんげんはそんな簡単に狂うのか、とすら、思っていました。
今回観て、彼女を発狂させたのが“孤独”だったのだと始めて分かりました。
ふたりで王を殺した。
夫が怯えている。怯えた夫は夫人の側から離れない。彼女は怯えきった夫をずっと見ていなければならなかった。
ふたりで犯したはずの罪だったけれど、彼女は共犯者を亡くし、孤独になった。
罪をひとりで抱えているうち、罪の意識が2倍にも3倍にも膨れ上がっていき、ふたりぶんの罪を背負って、背負いきれなる。
そして、狂ってしまう。
凄絶だった。
もーまつたかは凄い…狂ったその表情が本当に凄い。
からだを痙攣させて、目を見開いて何かをつぶやいている姿。
この夫人を毎日演じているまつたかの役者ぶりったらないですよ。ものすごいひとだ。
からだとこころが乖離してしまった夫人を、バカップルだった時と同じくらいやさしく介抱するマクベスがまた切ない。
そして、夫人が狂って初めてマクベスは気付くのです。
ひとりになった、と。
そして、彼は狂ってしまった妻を抱いて、この上なく正気に戻る。
正気のまま、どこか哀しそうに、暴走していく。
確信犯的暴走。
そして、妻が死んだことを知り、生きる意味すら見出せなくなってもまだ、生きることにしがみつこうとする。
この夫婦のすれ違いぶりが切なくて…
ああマクベスって名作なんだな、って申し訳ないけど始めて思いました。
シロウを観たときにもものすごい感動したんだけど、あの芝居もいらないギャグが多かったなーと思ったのを思い出してしまった…
でも、最終的にはものすごいカタルシスがあり、なんか“いいもの観たな”感があるんで、また観ちゃうんですよね…侮れないな新感線…。
余談ですがうっちー、出てきた瞬間に薄汚れたトートかと思ってしまった…
エリザで鍛えたその喉はメタルを歌うためだったのね、と言いたくなるほど見事なシャウトでした。
闇広メタルバージョン、歌ってほしい…